Studienkolleg とは — 学部進学に必要な1年間の準備課程
日本の高卒だけではドイツの大学入学資格を満たさない理由と、T-Kurs(理工系)の位置づけ。入学試験、Feststellungsprüfung、公立と私立の違い。
日本の高校を卒業して、そのままドイツの大学の学部に入学する。これができるかどうかは、あなたの高校の成績と、大学入学共通テストの結果によって変わります。
そして、条件を満たさない場合の受け皿が Studienkolleg(シュトゥーディエンコレーク) です。この記事では、そもそも自分に必要なのかという判定から始めます。
大前提:日本の高卒だけでは足りない
ドイツの大学に入るには HZB(大学入学資格) が必要です。ドイツ人にとってはギムナジウムを卒業して得る Abitur がこれにあたります。
日本の高校卒業(12年間の学校教育)は、それ単体では Abitur と同等とみなされません。ドイツのギムナジウムが13年制を基本としてきた歴史的経緯があり、教育年数と内容の両面で差があるためです。
そのため、日本の高校を出た人には追加の条件が課されます。
3つの経路
不足を埋める方法は、大きく3つです。
経路1:大学入学共通テストの成績で満たす
日本の高校卒業に加えて、大学入学共通テストで一定の成績を収めることで、直接の出願資格が認められる場合があります。受験科目数、合計点、志望分野に関連する科目の得点率について基準が設けられています。
ただし、この基準の具体的な数値については、日本語のサイトによって記載が異なります。 私は裏の取れない数値を載せない方針なので、ここでは数字を出しません。
必ず anabin と志望大学、または uni-assist で自分のケースについて直接確認してください。この条件は改定される可能性があり、また志望する分野によって要求される科目も変わります。
経路2:日本の大学に在籍してから出願する
日本の大学に一定期間在籍することで、出願資格を満たす方法です。在籍年数によって、Studienkolleg が必要かどうかが変わります。
高校卒業後にすぐ渡独するのではなく、日本の大学に進学したうえで改めてドイツを目指すという選択になります。日本の大学での成績と履修内容も評価対象になるため、無駄にはなりません。
経路3:Studienkolleg を修了する
上記のいずれも満たせない場合、あるいは選択としてこの道を選ぶ場合の受け皿です。次の節で詳しく書きます。
Studienkolleg とは
ドイツの大学入学資格を持たない外国人のための、1年間の準備課程です。大学の付属機関または州立の機関として運営されています。
学ぶのは語学だけではありません。ドイツの大学の1年目についていけるだけの専門基礎を、ドイツ語で学びます。
コースの種類
志望する学部の分野に応じてコースが分かれており、理工系は T-Kurs(技術コース)です。
| コース | 対象分野 | 主な科目 |
|---|---|---|
| T-Kurs | 工学・理学系 | 数学、物理、化学、情報、ドイツ語 |
| M-Kurs | 医学・生物系 | 生物、化学、物理、ドイツ語 |
| W-Kurs | 経済・社会科学系 | 数学、経済、ドイツ語 |
| G-Kurs | 人文系 | 歴史、ドイツ語、文学 |
志望学部とコースが一致していないと進学できません。 理工系ならT-Kurs一択です。
入学試験(Aufnahmeprüfung)
Studienkolleg に入るにも試験があります。理工系の場合、ドイツ語と数学が課されるのが一般的です。
受験にはドイツ語 B2 程度が必要とされることが多く、つまり Studienkolleg に入る前の段階で既にドイツ語をかなり進めておく必要があります。ここを知らずに計画を立てると、丸1年ずれます。
修了試験(Feststellungsprüfung)
Studienkolleg の修了時に受ける試験で、これに合格して初めて大学入学資格が得られます。
そして重要な点があります。
Feststellungsprüfung の成績が、そのまま志望大学の合否に効きます。 通過すれば終わりではなく、ここで取った点数で進学先が決まります。
公立と私立
公立の Studienkolleg は授業料が無償(学期費のみ)ですが、定員が限られており競争があります。私立は有料で、年間で相応の費用がかかります。
ドイツ語がスケジュールを支配する
学部ルートを検討するうえで、最も見落とされる点です。
- Studienkolleg の入学試験に B2 程度
- 大学の学部入学に TestDaF 4×4 または DSH-2(≒ C1)
- ゼロから C1 まで、集中的にやって1.5〜2年
つまり全体像はこうなります。
| 段階 | 期間 |
|---|---|
| ドイツ語 ゼロ → B2 | 1〜1.5年 |
| Studienkolleg | 1年 |
| (並行して C1 へ) | — |
| 学部 | 3年 |
学部を卒業するまでに5年以上かかる計算になります。これは修士から入る場合の2年と比べると、相当な時間差です。
それでも学部ルートを選ぶ意味
長く、難しい。それでも選ぶ理由はあります。
- 授業料ゼロの恩恵を、学部の3年間フルに受けられる
- ドイツ語がネイティブに近い水準まで到達する
- 現地の学生ネットワークができる
- そのまま修士へ連続して進める
長期でドイツに根を張るつもりなら、修士から入る人が到達できない場所に行けます。ドイツ語で議論し、ドイツ人の同級生と競争した経験は、就職市場でも効きます。
修士から入るという選択肢
一方で、目的が「ドイツで学位を取り、エンジニアとして働く」ことなら、修士から入る方が圧倒的に速いのも事実です。
- 英語だけで出願でき、英語だけで修了できる
- 日本の大学で学士を取っているので、出願資格の問題が発生しない
- 準備期間は12〜18ヶ月
- 授業料はやはりゼロ
高校生の段階でドイツを意識しているなら、日本の理工系学部に進んで、修士でドイツへ行くという道を、必ず比較対象に入れてください。遠回りに見えて、実際には速いことが多いです。
詳しくは修士進学ルートと英語開講プログラムの記事を参照してください。
まず確認すべきこと
- anabin で自分の高校と、日本の学歴がどう評価されるか確認する
- 共通テストの成績で直接出願できる可能性があるか、uni-assist または志望大学に問い合わせる
- ドイツ語をいつから始められるか逆算する — ここが全体のスケジュールを決めます
- 修士から入る道と、所要期間・費用・到達点を比較する
2は必ず一次情報で確認してください。ネット上の情報は古いものと新しいものが混在しており、日本語の解説サイト間でも記載が食い違っています。あなたの進路の話なので、他人の要約ではなく、公式の回答を取ってください。
この記事の情報について
日本の学歴に対するドイツ側の評価基準は改定されます。また要求される条件は、志望する大学・州・分野によって異なる場合があります。この記事は制度の構造を説明したものであり、個別のケースの結論ではありません。必ず anabin、uni-assist、志望大学の International Office で確認してください。