志望動機書(motivation letter)の書き方 — 日本の自己PRをそのまま訳すと落ちる
ドイツの大学では Motivationsschreiben と呼ばれます。評価されるのは情熱ではなく論理的接続。学士の履修 → 不足している知識 → このプログラムの科目 → キャリア、という構造の作り方を、実例の骨格つきで。
ドイツの大学では Motivationsschreiben と呼ばれます。英語のプログラムなら Letter of Motivation として提出します。
そして、日本の自己PRや志望動機書をそのまま英訳すると、かなりの確率で落ちます。求められているものが根本的に違うからです。
日本式とドイツ式は、評価している対象が違う
まずここを理解してください。
| 日本の志望動機書 | ドイツの Motivationsschreiben | |
|---|---|---|
| 評価するもの | 人柄・熱意・成長の物語 | 専攻の適合性 |
| 求められる証明 | この人は伸びる | この人はこの課程を修了できる |
| 効く要素 | 困難を乗り越えた経験 | 履修科目と課程の対応関係 |
| 文体 | 情緒的でもよい | 事実と論理のみ |
ドイツの審査担当者が知りたいのは、たったひとつです。
この学生は、うちの課程についてこられるのか。
熱意は判断材料になりません。「幼い頃から機械が好きでした」も、「貴学の充実した設備に魅力を感じました」も、この問いに何も答えていないので、読み飛ばされます。
通る文章の構造
論理を4つの段階で組み立てます。これが骨格です。
- 学士で何を修めたか — 具体的な科目名と、そこで身につけた能力
- 何が足りないか — 目標に対して、自分に欠けている知識を自分で特定する
- なぜこの課程なのか — その欠けている部分が、この課程のどの科目で埋まるのか
- その先に何をするのか — 修了後のキャリアと、それがなぜこの課程を経由する必要があるのか
この1→2→3→4が一本の線でつながっていれば、それだけで通用します。逆に、この線が切れている文章は、どれだけ熱意が書かれていても通りません。
3が最重要
「なぜこの課程なのか」に、その大学固有の答えがあるかどうか。 ここで差がつきます。
「世界的に評価が高いから」「研究環境が充実しているから」——これらはどの大学にも当てはまるので、何も言っていないのと同じです。テンプレートを使い回している証拠にもなります。
代わりに書くべきなのは、こういう具体です。
- 科目名を挙げる。「Advanced Control Systems と Robot Perception を履修したい」
- 研究室名・教授名を挙げる。「◯◯教授の△△に関する研究に参加したい」
- その大学にしかない設備・連携先を挙げる
これらは公式サイトの Modulhandbuch(科目一覧)や研究室ページを読めば分かります。読んだ形跡があること自体が、志望度の証明になります。
書いてはいけないこと
幼少期の話から始める。 ドイツの審査官は最初の3行で判断します。子供の頃の思い出は不要です。
大学を褒める。 相手は自分の大学の評判を知っています。褒め言葉に紙面を使うと、その分だけ自分の話が減ります。
汎用テンプレートを使う。 大学名だけ差し替えた文章は見抜かれます。3の部分が空疎になるので、すぐ分かります。
能力を形容詞で主張する。 「粘り強く取り組みました」ではなく、「6ヶ月かけて◯◯を実装し、△△を□□%改善した」と書きます。形容詞ではなく事実と数字で書くのがドイツ式です。
成績の悪さを言い訳する。 弱点に触れる必要がある場合は、言い訳ではなく「その後どう補ったか」を書きます。
分量と形式
- A4で1ページが標準です。2ページに渡るのは長すぎます
- ビジネスレター形式(宛先、日付、件名、本文、署名)
- 課程名と、可能なら出願番号を件名に明記する
- 課程ごとに書き直す。使い回しは3の部分で必ずばれます
CV(履歴書)は別に提出します。経歴の羅列は CV の仕事なので、Motivationsschreiben で経歴を並べ直す必要はありません。ここでは論理を書きます。
段落ごとの構成例
参考までに、骨格だけ示します。中身はあなた自身の履修と目標で埋めてください。
| 段落 | 役割 | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 何に出願するか、自分は何者か | 3〜4行 |
| 2 | 学士で修めた内容と、身につけた具体的な能力 | 5〜7行 |
| 3 | 目標に対して足りていないもの | 3〜5行 |
| 4 | この課程のどの科目・研究室がそれを埋めるのか | 6〜8行 |
| 5 | 修了後のキャリアと、この課程を経由する必要性 | 4〜5行 |
| 6 | 締め | 2〜3行 |
段落2と4の対応関係が、この文章の背骨です。2で挙げた不足が、4で挙げた科目で埋まるという対応が読み取れれば成功です。
書き上げたあとの自己チェック
以下の質問に答えられなければ、書き直す価値があります。
- 大学名を別の大学に差し替えても成立してしまわないか。 成立するなら、3が書けていません
- 形容詞を削っても情報が残るか。 残らないなら、事実が足りていません
- 段落2で挙げた不足が、段落4で埋まっているか。 対応していないなら、論理が切れています
- 最初の3行で、何に出願する誰なのかが分かるか
添削について
自分の志望動機書がドイツの基準で通用するかどうかは、自分では判定できません。日本語で読んで違和感がないことと、ドイツの審査官に評価されることは別だからです。
そこだけを見る書類レビューを用意しています。出願自体は自分で進めたい方向けです。
この記事の情報について
要求される形式や分量は課程によって異なります。文字数の指定や、特定の項目を含めるよう指示がある場合は、必ずそちらを優先してください。この記事は一般的な考え方を示したものです。